2023年4月3日放送スタートの第108作となるNHK連続テレビ小説「らんまん」
主人公の植物学者・槙野万太郎(まきのまんたろう)は「神木隆之介」さん、ヒロイン・寿恵子(すえこ)は「浜辺美波」さんが演じます。あらすじは、以下の通りです。
江戸時代末期の高知県、酒造業を営む商家に待望の男の子・槙野万太郎が誕生。虚弱な子どもだが、植物のことが大好き。両親を早くに亡くした万太郎は祖母・タキの手で育てられる。幕末から昭和にかけ、愛する植物のため「日本独自の植物図鑑を編纂する」夢へと邁進する。
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「らんまん」にもエピソードが登場する、トガクシソウが「破門草」と呼ばれる事件について紹介します。
「トガクシソウ」が破門草(はもんそう)と呼ばれる理由
植物学者・伊藤篤太郎(いとうとくたろう)によって日本で始めて学名が付けられた「トガクシソウ」は、別名「破門草(はもんそう)」とも呼ばれています。
その理由は、東京大学「植物学教室」の初代教授・矢田部良吉より先に、伊藤篤太郎が学名を発表したからです。
東京大学「植物学教室」に出入りしていた篤太郎は、これにより矢田部から破門され、出禁となります。これが「トガクシソウ」が、破門草と呼ばれる理由です。
ドラマ内では伊藤篤太郎は、「伊藤孝光」として登場します。「伊藤孝光」を演じるのは「落合モトキ」さんです。
トガクシソウ「破門草事件」の史実
マキシモヴィッチ博士に「トガクシソウ」を送って鑑定を依頼していた矢田部良吉は、新種として自分の名前が献名された学名「Yatabea japonica Maxim.」が付けられる予定でした。
その話を聞いた伊藤篤太郎が、マキシモヴィッチ博士の前に、トガクシソウに学名を付けて発表しました。流れは以下の通りです。
- 1875年(明治8年)篤太郎の叔父・伊藤謙が、「トガクシソウ」を戸隠山で採集
- 1883年(明治16年)篤太郎がマキシモヴィッチ博士に標本を送付、学術誌に「Podophyllum japonicum T.Itô ex Maxim.」 としてメギ科ミヤオソウ属の一種として発表
- 1887年(明治20年)矢田部良吉も、「トガクシソウ(トガクシショウマ)」をマキシモヴィッチ博士に送る
- 1888年(明治21年)3月、矢田部が送った「トガクシソウ」は新属として「Yatabea japonica Maxim. 」として献名されることに。矢田部は嬉しさから、助教授・大久保三郎に手紙を見せてしまう。
- 大久保三郎から話を聞いた篤太郎は、「トガクシソウ」は叔父・伊藤謙が発見したものだっため、新属として学名を組み換えイギリスの植物学雑誌に「Ranzania japonica (T.Itô ex Maxim.) T.Itô」として発表
マキシモヴィッチ博士が、篤太郎の後に発表した「Yatabea japonica Maxim.」の学名は無効となります。学名は先に発表されたものが、先に採用されるためです。
※「らんまん」のドラマ内でも描かれていますが、誰よりも先に新種を発見して、自分の名前が付くのは、植物学者としての何よりの名誉だったのかと思います。
伊藤篤太郎(T.Itô)は植物に日本人が初めて学名を付けた人物
「トガクシソウ」により、伊藤篤太郎は「日本で初めて学名をつけた人物」となります。
明治時代の初めは、日本には文献も標本も少なく、新種を発見しても鑑定できませんでした。そのため、ロシアの植物学者・マキシモヴィッチ博士に植物標本を送っていました。
最初のトガクシソウの学名は「Podophyllum japonicum T.Itô ex Maxim.」です。「ex Maxim.」は、マキシモヴィッチが代理で付けたという意味です。
植物の学名の付け方はラテン語で「属名」「種名」、そして最後に「命名者」の順番です。
そして、伊藤篤太郎は学名を組み換えイギリスの植物学雑誌に新属「Ranzania japonica (T.Itô ex Maxim.) T.Itô」と発表しています。
「T.Itô」は「伊藤篤太郎」が学名を付けたという意味です。Ranzania(ランザニア)は江戸時代の本草学者・小野蘭山(おのらんざん)に由来しています。
トガクシソウ(戸隠草)はどんな植物?
「トガクシソウ(戸隠草)」はメギ科に属する多年草です。中部から東北地方の山に僅かに見られる日本固有の植物で、6月に開花します。
別名、「トガクシショウマ(戸隠升麻)」と呼ばれます。
#朝ドラらんまん
トガクシソウ
昨年見ることができた希少な花。 pic.twitter.com/UoZb9vAbEs— ちゃこふ (@0608f) July 6, 2023
学名は伊藤篤太郎が付けたので、「Ranzania japonica (T.Itô ex Maxim.) T.Itô」です。
「Ranzania(ランザニア)」は、江戸時代の本草学者である小野蘭山に敬意を表して献名されたものです。
ドラマ「らんまん」で「破門草事件」に関連する人物
前述の実在人物は、朝ドラ「らんまん」ではそれぞれ、以下の役名で登場しています。
- 矢田部良吉 ⇒ 田邊彰久(要潤)
- 伊藤篤太郎 ⇒ 伊藤孝光(落合モトキ)
- 大久保三郎 ⇒ 大窪昭三郎(今野浩喜)
※朝ドラ「らんまん」はモデルの実話をエピソードにしている場合もありますが、フィクションとして制作されたオリジナル作品です。
まとめ
NHK朝ドラ「らんまん」のエピソードにも登場するのがトガクシソウの「破門草事件」です。
「破門草事件」の史実は、トガクシソウの学名を伊藤篤太郎が先に発表したため、これに怒った東京大学「植物学教室」の初代教授・矢田部良吉から破門され、出禁となった事件です。
また、主人公・万太郎(神木隆之介)が、初めて学名を付けて発表する植物は「ヤマトグサ」です。「ヤマトグサ」については、以下でまとめています。
そして、万太郎のモデル「牧野富太郎」さんの名前を世界に知らしめることになった水草「ムジナモ」については、以下でまとめています。
他にも、「らんまん」に登場する植物・花・草に関しては、以下でまとめています。
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