「ブラッサム」同人誌「黎明」にモデルはある?宇野千代の「海潮音」「海鳥」と史実を解説
朝ドラ「ブラッサム」【第7話】から、葉野珠(石橋静河)たち女学生が作る同人誌「黎明(れいめい)」が登場します。
「黎明」はドラマ上の同人誌ですが、珠の実在モデル・宇野千代(うの・ちよ)も、女学校時代に同人誌「海潮音(かいちょうおん)」に関わっていました。
さらに女学校卒業後には、仲間と回覧文芸誌「海鳥(うみどり)」を出しています。
「ブラッサム」の同人誌「黎明」の史実モチーフと考えられる「海潮音」、そして「海鳥」との違いを史実から解説します。
「ブラッサム」同人誌「黎明」とは?珠・忍たち女学生が制作
「ブラッサム」【第2週】、葉野珠は山口第二高等女学校の4年生になります。
女学校では「良妻賢母(りょうさいけんぼ)」を育てるための教育が徹底されています。珠や同級生たちは、女性が自由に生き方を決められない現状に、割り切れない思いを抱いています。
【第6話】では、同級生の角田忍(木竜麻生)が、そうした思いを表現するための同人誌作りを提案します。
そして【第7話】で、珠たちが作品を持ち寄った同人誌「黎明」が完成します。
忍は女性の地位向上をうたった論文を、珠はトルストイの民話「イワンの馬鹿」の主人公を女性に置き換えた小説を寄せ、同級生の間で評判を呼びます。
「黎明」は、珠にとって自分の文章を人に読んでもらう大きな一歩となりそうです。
珠たちが通う「山口第二高等女学校」の実在モデルについては、以下の記事で解説しています。
「黎明」の実在モデルは?宇野千代が女学校時代に関わった「海潮音」
「ブラッサム」の同人誌「黎明」の史実モチーフとして考えられるのが、宇野千代が女学校時代に関わった同人誌「海潮音(かいちょうおん)」です。
宇野千代は1910年(明治43年)3月、12歳のときに岩国尋常小学校を卒業し、岩国高等女学校に入学しました。当時の岩国高等女学校の本科は4年制です。
女学校在学中の1913年(大正2年)、千代は文学への関心を深め、変名で「女子文壇」などの雑誌に投稿するようになります。この年には文学サークルも始めました。
宇野千代のこの時期の文学活動として、同人誌「海潮音」があります。
ドラマで珠たちが「黎明」を作るのも、同じ大正2年(1913年)の女学校時代です。
時期が重なることと、女学校在学中の文学活動という共通点から、「海潮音」が「黎明」の史実モチーフの一つになっていると考えられます。
ただし、「黎明」のモデルが「海潮音」であることは、公式には明らかにされていません。「黎明」という誌名や、忍たち同級生との制作の過程は、ドラマオリジナルの設定です。
宇野千代は女学校卒業後にも回覧文芸誌「海鳥」を発行
宇野千代には、もう一つ混同しやすい同人誌があります。それが、「海鳥(うみどり)」です。
宇野千代は1914年(大正3年)3月、16歳で岩国高等女学校を卒業しました。その後、川下村(現在の岩国市)の尋常小学校で代用教員(正規の教員資格を持たずに教壇に立つ教員)として働き始めます。
この代用教員時代に作ったのが「海鳥」です。千代は菊池寛一、鑓田研一(やりた・けんいち)ら同人7人で、回覧雑誌(1冊を仲間内で回し読みする手作りの雑誌)として「海鳥」を出していました。
「海鳥」は1915年(大正4年)に発行されたものの、3号で廃刊になったとされています。
同じ年の秋、千代は同僚教員との恋愛が問題となって学校を去り、朝鮮の京城(けいじょう/現在の韓国・ソウル)へ渡りました。
朝ドラの同人誌「黎明」|史実の「海潮音」「海鳥」の違い
ドラマの「黎明」と、宇野千代が関わった「海潮音」「海鳥」の違いをまとめると、以下の通りです。
| 黎明(ドラマ内) | 海潮音(実在) | 海鳥(実在) | |
|---|---|---|---|
| 時期 | 大正2年(1913年) | 大正2年(1913年)ごろ | 大正4年(1915年) |
| 人物 | 葉野珠・角田忍たち | 宇野千代 | 宇野千代ら同人7人 |
| 立場 | 女学校4年生 | 女学校在学中 | 代用教員時代 |
| 位置づけ | ドラマ上の同人誌 | 実在した同人誌 | 実在した回覧文芸誌 |
「黎明」と「海潮音」はともに大正2年の女学校時代という大きな共通点があります。
一方、「海鳥」は宇野千代が女学校を卒業して代用教員になった後の文学活動です。
「黎明」は珠が作家を目指す原点に?宇野千代は「脂粉の顔」で作家へ
宇野千代(出典:国立国会図書館「近代日本人の肖像」)
宇野千代は、いきなり小説家として成功したわけではありません。女学校時代には雑誌へ投稿し、仲間と文学活動を続け、卒業後にも「海鳥」を出しています。
その後、1921年(大正10年)1月、23歳のときに「脂粉の顔(しふんのかお)」が時事新報(じじしんぽう)の懸賞短編小説で1等に選ばれ、本格的に作家への道を歩んでいきます。
「ブラッサム」で珠が仲間と「黎明」を作るエピソードは、そんな宇野千代の文学活動の原点をドラマとして描いたものと考えられます。
葉野珠の実在モデル・宇野千代の生涯については、以下の記事で詳しく解説しています。
【出典・参考資料】
まとめ
朝ドラ「ブラッサム」で、葉野珠たちが女学校時代に作る同人誌が「黎明」です。
宇野千代は史実でも、1913年(大正2年)の女学校時代に同人誌「海潮音」に関わっています。さらに女学校卒業後、代用教員となった時代には、同人7人で回覧文芸誌「海鳥」を作りました。
他にも「ブラッサム」のキャスト・スタッフ一覧は、以下でまとめています。
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