NHK連続テレビ小説「風、薫る」のダブルヒロインは、「見上愛」さんと「上坂樹里」さんです。ドラマのあらすじは、以下の通りです。

明治18年、日本初の看護婦養成所が誕生した時代。シングルマザーの一ノ瀬りん(見上愛)と、教会で育った大家直美(上坂樹里)は運命に導かれ同じ養成所へ入所する。

正反対のふたりは「看護とは何か」を問いながらぶつかり合い成長し、やがて最強のバディとして新たな時代を切り拓いていく。

【第83話】では、環からの手紙を受け取ったりんが、新潟・高田から、東京にいる直美のもとへ駆けつけます。

いまなら、上越妙高駅から北陸新幹線に乗れば東京までおよそ2時間。ところが、ドラマの舞台は1891年(明治24年)です。この時代、高田から東京方面までは、鉄道だけで一本につながっていませんでした。

りんは、どんなルートで高田から東京へ向かい、どれくらいの時間がかかったのか。【第83話】の旅路を、当時の鉄道事情から考えます。

 

「風、薫る」【第83話】りんは新潟・高田から東京の直美のもとへ

「風、薫る」【第83話】りんは新潟・高田から東京の直美のもとへ

新潟の高越女学校で舎監(しゃかん)を続けていたりんのもとに、娘・環から手紙が届きます。手紙を読んだりんは、東京にいる直美のもとへ向かうことを決意し、高田(現在の上越市)から急いで旅立ちます。

りんが駆けつける背景には、直美の出生をめぐる大きな動きがありました。長らく謎だった直美の実母が、瑞穂屋で働く柳川文(演:内田慈)だと明らかになりました。

柳川文が直美の実母と判明した経緯は以下の記事でまとめています。

「風、薫る」直美の母親は柳川文?お守りと同じ柄の髪飾りから実母・夕凪説が浮上
「風、薫る」直美の母親は柳川文?お守りと同じ柄の髪飾りから実母・夕凪説「風、薫る」【第80話】で、直美(上坂樹里)のお守りと同じ柄の髪飾りを柳川文(内田慈)が持っていることが判明。文は直美の実の母親なのか、かつて夕凪を名乗っていた女性なのか。【第17週】「直美の母」に向けて実母説を考察します。...

 

ドラマでは場面が切り替わるため、りんがあっという間に東京へ着いたようにも見えます。しかし、当時の高田から東京までは、いまのように新幹線一本で移動できる時代ではありませんでした。

鉄道と馬車鉄道を何度も乗り継ぐ、丸一日がかりの長旅でした。

 

明治24年は横川―軽井沢間が未開通|信越線と碓氷峠の鉄道事情

1891年(明治24年)の時点で、新潟県の直江津から長野を経て軽井沢までは、いまの信越本線にあたる鉄道がすでに開通していました。

りんが暮らす高田(現在の上越市)にも、1886年(明治19年)に高田駅が開業しており、鉄道で長野方面へ向かうことができました。東京側でも、上野から高崎を通って群馬県の横川までは、鉄道で行くことができました。

問題は、その間にある碓氷峠(うすいとうげ)です。群馬県の横川と長野県の軽井沢のあいだには険しい峠がそびえ、この区間だけは蒸気機関車の走る鉄道がまだ通っていませんでした。

横川と軽井沢を結ぶ鉄道が開通するのは、1893年(明治26年)4月のこと。りんが東京へ向かった1891年には、峠のこの区間を別の乗りもので越えたと考えられます。

当時の主なルートは、次のようになります。

高田
↓鉄道
長野
↓鉄道
軽井沢
↓碓氷馬車鉄道
横川
↓鉄道
高崎
↓鉄道
上野

高田から東京まで、ずっと同じ列車に乗っていられたわけではありません。軽井沢では馬車鉄道に、横川では再び蒸気機関車にと、途中で何度も乗り継ぐ必要がありました。

 

明治24年、新潟県・高田から東京・上野までは約12~14時間

明治24年、新潟県・高田から東京・上野までは約12~14時間

当時の鉄道と馬車鉄道の所要時間をもとにすると、新潟県高田から東京の上野駅までは、およそ12~14時間かかったと推測されます。

ただしこれは移動時間だけの目安です。当時は列車の本数も少なく、軽井沢や横川で次の便を待つ時間もありました。乗り継ぎ待ちを入れると15時間前後、接続によってはそれ以上になったとみられます。

早朝に高田を出発しても、上野に着くのは夜になったと考えられます。列車や馬車鉄道の接続によっては、さらに時間がかかった可能性もあります。

 

高田から軽井沢へ|信越線で長野方面を移動

りんはまず、高田から信越本線につながる鉄道で長野方面へ向かったと考えられます。高田から軽井沢へ向かう鉄道は、新井(あらい)や関山(せきやま)、長野、上田、小諸などを経由していました。

当時の時刻表をもとにすると、直江津から軽井沢まではおよそ6時間半。高田は直江津より長野側にあるため、高田から軽井沢までは、それより少し短い時間で到着したと考えられます。

 

軽井沢から横川へ|碓氷馬車鉄道で約2時間半

軽井沢からは、「碓氷馬車鉄道」に乗り換えたと考えられます。馬が小さな客車を引く鉄道で、峠を越える鉄道が開通する前の1888年(明治21年)から1893年(明治26年)まで走っていました。りんの旅した1891年は、ちょうどその活躍の時期にあたります。

横川と軽井沢のあいだは急な坂が続き、蒸気機関車の鉄道を通すのが難しい難所でした。峠越えにはおよそ2時間半かかり、現在と比べれば、時間のかかる大変な道のりでした。

 

横川から上野へ|高崎を経由して東京へ

横川からは、ふたたび蒸気機関車の列車に乗ります。高崎、熊谷(くまがや)、大宮などを経由して、上野へ向かったと考えられます。横川から上野までは、順調でも4時間半ほどの道のりです。

なお、1891年にはまだ東京駅がありません(開業は1914年)。りんが降り立ったのは上野駅で、そこから直美のいる場所へは人力車や徒歩で向かったのかもしれません。

 

まとめ

「風、薫る」【第83話】、環からの手紙を受け取ったりんは、新潟・高田から東京にいる直美のもとへ駆けつけます。

1891年(明治24年)は、軽井沢と横川を結ぶ鉄道がまだ開通していませんでした。りんは、高田から軽井沢まで鉄道で向かい、碓氷馬車鉄道で横川へ。そこから再び鉄道に乗り、上野を目指したと考えられます。

他にも「風、薫る」のキャスト・スタッフ一覧は、以下の記事でまとめています。

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大森拓也
放送作家、物書き、フリーライター歴20年以上です。放送作家としての仕事については、以下のブログに記載しています。
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