「風、薫る」【第83話】では、環からの手紙を受け取ったりん(見上愛)が、新潟・高田から、東京にいる直美のもとへ駆けつけます。

【第90話】では、直美(上坂樹里)、シマケン(佐野晶哉)、環(英茉)が、今度は東京から新潟へ向かい、りんと久しぶりに再会します。

いまなら、上越妙高駅から北陸新幹線に乗れば東京までおよそ2時間。ところが、ドラマの舞台は1891年(明治24年)です。この時代、高田から東京方面までは、鉄道だけで一本につながっていませんでした。

りんや直美たちは、どのようなルートで東京と高田を移動し、どれくらいの時間がかかったのでしょうか。当時の鉄道事情から考えます。

 

「風、薫る」【第83話】りんは新潟から東京|【第90話】直美たちは新潟へ

「風、薫る」【第83話】りんは新潟から東京|【第90話】直美たちは新潟へ

【第83話】新潟の高越女学校で舎監(しゃかん)を続けていたりんのもとに、娘・環から手紙が届きます。手紙を読んだりんは、東京にいる直美のもとへ向かうことを決意し、高田(現在の上越市)から急いで旅立ちます。

りんが駆けつける背景には、直美の出生をめぐる大きな動きがありました。長らく謎だった直美の実母が、瑞穂屋で働く柳川文(演:内田慈)だと明らかになりました。

柳川文が直美の実母と判明した経緯は以下の記事でまとめています。

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また、【第90話】では、直美、シマケン、環が、りんのいる新潟を訪ねます。りんが暮らしているのは、高越女学校のある高田です。

ドラマでは場面が切り替わるため、あっという間に東京・新潟へ着いたようにも見えます。しかし、当時はいまのように新幹線一本で移動できる時代ではありませんでした。

鉄道と馬車鉄道を何度も乗り継ぐ長旅でしたが、1891年(明治24年)9月の時刻表では、東京・上野と新潟・高田の間を同じ日のうちに移動できました。

 

明治24年は横川―軽井沢間が未開通|信越線と碓氷峠の鉄道事情

1891年(明治24年)の時点で、新潟県の直江津から長野を経て軽井沢までは、後の信越本線にあたる鉄道がすでに開通していました。

りんが暮らす高田(現在の上越市)にも、1886年(明治19年)に高田駅が開業しており、鉄道で長野方面へ向かうことができました。東京側でも、上野から高崎を通って群馬県の横川までは、鉄道で行くことができました。

問題は、その間にある碓氷峠(うすいとうげ)です。群馬県の横川と長野県の軽井沢のあいだには険しい峠がそびえ、この区間だけは蒸気機関車の走る鉄道がまだ通っていませんでした。

横川と軽井沢を結ぶ鉄道が開通するのは、1893年(明治26年)4月のこと。りんが東京へ向かった1891年には、峠のこの区間を別の乗りもので越えたと考えられます。

当時の主なルートは、次のようになります。※東京から高田へ向かう場合は、逆ルートになります。

高田
↓鉄道
長野
↓鉄道
軽井沢
↓碓氷馬車鉄道
横川
↓鉄道
高崎
↓鉄道
上野

高田から東京まで、ずっと同じ列車に乗っていられたわけではありません。軽井沢では馬車鉄道に、横川では再び蒸気機関車にと、途中で何度も乗り継ぐ必要がありました。

 

明治24年、東京・上野と新潟・高田の移動は約14時間

明治24年、東京・上野と新潟・高田の移動は約14時間

1891年(明治24年)9月1日現在の時刻表では、上野を午前6時に出発すると、軽井沢発午後2時05分の列車に乗り継ぎ、同日の午後8時05分に直江津へ到着できました。

高田は直江津より長野側にあるため、上野から高田までは、これより少し短い約14時間の旅だったと考えられます。

反対方向も、直江津を午前7時に出発し、軽井沢と横川の間で碓氷馬車鉄道を利用すると、同日の午後9時25分に上野へ到着できました。高田から上野へ向かう場合も、接続が合えば同じ日のうちに移動でき、所要時間は約14時間だったと考えられます。

 

高田から軽井沢へ|信越線で長野方面を移動

りんは、高田駅から長野方面へ向かう列車に乗ったと考えられます。列車は新井(あらい)、関山(せきやま)、長野、上田、小諸などを経由し、軽井沢へ向かいました。

1891年(明治24年)9月1日現在の時刻表では、高田の北にある直江津から軽井沢までの所要時間は6時間10分でした。直江津を午前7時に出発し、途中で高田を通って、午後1時10分に軽井沢へ到着する接続です。

りんは途中の高田駅から乗ったため、高田から軽井沢までの所要時間は、6時間10分より少し短かったと考えられます。

 

軽井沢から横川へ|碓氷馬車鉄道で約2時間半

軽井沢からは、「碓氷馬車鉄道」に乗り換えたと考えられます。馬が小さな客車を引く鉄道で、峠を越える鉄道が開通する前の1888年(明治21年)から1893年(明治26年)まで走っていました。りんの旅した1891年は、ちょうどその活躍の時期にあたります。

横川と軽井沢のあいだは急な坂が続き、蒸気機関車の鉄道を通すのが難しい難所でした。峠越えにはおよそ2時間半かかり、現在と比べれば、時間のかかる大変な道のりでした。

 

横川から上野へ|高崎を経由して東京へ

横川からは、ふたたび蒸気機関車の列車に乗ります。高崎、熊谷(くまがや)、大宮などを経由して、上野へ向かったと考えられます。横川から上野までは、順調でも4時間半ほどの道のりです。

なお、1891年にはまだ東京駅がありません(開業は1914年)。りんが降り立ったのは上野駅だったと考えられ、そこから直美のいる場所へは人力車や徒歩で向かったのかもしれません。

 

まとめ

「風、薫る」【第83話】では、りんが新潟・高田から東京へ向かい、【第90話】では、直美、シマケン、環が東京から新潟を訪ねます。

1891年(明治24年)は、横川―軽井沢間の鉄道が未開通で、碓氷馬車鉄道への乗り継ぎが必要でした。当時の時刻表では、東京・上野―新潟・高田間は、接続が合えば同日中に移動できる約14時間の旅でした。

他にも「風、薫る」のキャスト・スタッフ一覧は、以下の記事でまとめています。

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大森拓也
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