NHK連続テレビ小説「風、薫る」のダブルヒロインは、「見上愛」さんと「上坂樹里」さんです。ドラマのあらすじは、以下の通りです。

明治18年、日本初の看護婦養成所が誕生した時代。シングルマザーの一ノ瀬りん(見上愛)と、教会で育った大家直美(上坂樹里)は運命に導かれ同じ養成所へ入所する。

正反対のふたりは「看護とは何か」を問いながらぶつかり合い成長し、やがて最強のバディとして新たな時代を切り拓いていく。

【第21話】では、大家直美(上坂樹里)が「梅岡女学校付属看護婦養成所」への入学時、髪を切って登場します。

現代なら何でもないこの行為が、明治19年という時代においては、まわりを驚かせるほど異例なことだったのです。

 

「風、薫る」第21話、直美が髪を切って看護婦養成所へ

「風、薫る」第21話、直美が髪を切って看護婦養成所へ

「梅岡女学校付属看護婦養成所」の1期生として集まったのは、りん(見上愛)・直美(上坂樹里)に加え、多江(生田絵梨花)、喜代(菊池亜希子)などの7人が集まり、年齢も個性もバラバラな寮生活が始まります。

明治19年の入学にあたって、直美は長い髪をばっさりと切ってきました。ナレーションでも「この時代、髪を切るのはご法度」と語られるほど、当時の常識から外れた行為です。

養成所の所長・梶原敏子(伊勢志摩)も髪を切った直美に気づき、「あなたはいつから、その髪型を?理由を伺えますか?」と問いかけます。直美はこう答えました。

「私は家族もおらず、咎める人もいないので、養成所に入る前に髪を切りました」

直美のこの言葉は、彼女の孤独な境遇を示すと同時に、誰にも縛られず新しい道へ踏み出す覚悟の表れでもあります。

所長がわざわざ理由を問いただすほど、この時代の女性が髪を切ることは異例のことでした。

また、「梅岡女学校付属看護婦養成所」に登場するキャスト・俳優のプロフィールは、以下の記事でまとめています。

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明治19年に女性が髪を切るのはなぜ異例だったのか

明治19年に女性が髪を切るのはなぜ異例だったのか

直美が髪を切って「梅岡女学校付属看護婦養成所」に入学したのは、明治19年(1886年)です。

この時代に女性が髪を切るということが、どれほど珍しいことだったのでしょうか。史実をもとに背景を解説します。

また、朝ドラ「風、薫る」の年表、りんと直美の年齢と時代背景については以下の記事で紹介しています。

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女子断髪禁止令とは?明治時代の女性が髪を切れなかった理由

明治4年(1871年)、政府は「散髪脱刀令」を布告し、男性が髷(マゲ)を結わずに散髪することや、士族が帯刀しないことを自由に認めました。「ざんぎり頭を叩いてみれば文明開化の音がする」という言葉が流行するほど、男性の短髪は文明開化のシンボルとなりました。

しかし、女性にとってはまったく別の話でした。断髪令の影響を受けて髪を切る女性が現れたところ、世論は猛反発。明治5年(1872年)には東京府が女性がみだりに髪を切ってはいけない「女子断髪禁止令」を布告しています。

 

明治時代の断髪は未亡人や出家を連想させる行為だった

当時、女性が髪を切ることは、夫を亡くした未亡人や、仏門に入る人を連想させる行為でもありました。そのため、一般の女性が理由もなく髪を短くすることは、周囲から奇異に見られやすかったと考えられます。

 

明治時代の女性は「断髪届」が必要だった地域もある

実際、千葉県白井市の広報紙「広報しろい」2020年6月15日号では、明治9年(1876年)付けの「断髪届」とみられる古文書が紹介されています。これは、ある女性が病気平癒を願って髪を切ったことを、千葉県に届け出たものとされています。

つまり、明治時代の女性の断髪は、地域や時期によっては行政に届け出る必要があるほど、特別視されていた行為だったといえます。

出典:白井市「広報しろい」2020年6月15日号「歴史のしずく 明治時代の断髪届」

 

日本髪の手入れは半日がかり…それでも髪を切りにくかった理由

当時の日本髪には鬢付け油(びんつけあぶら)が使われており、洗髪だけで半日かかるほど手間のかかるものでした。明治18年(1885年)には「婦人束髪会」が結成され、日本髪の金銭的・衛生的な負担を訴え始めていましたが、世間に浸透するにはまだ時間が必要でした。

「長い黒髪こそ女性の美しさ」という価値観は、日本人に深く根付いていました。手間がかかると分かっていても、女性が髪を切ることには、なお強い抵抗感があったと考えられます。

 

明治19年は女性の髪型が変わり始めた時代だった

上流階級の間では、明治16年(1883年)に鹿鳴館が開館したことで洋装・洋髪が取り入れられ始めていました。しかし一般の女性は依然として着物に日本髪が圧倒的多数。束髪(そくはつ)など新しいスタイルが一般に広まるのはもう少し後のことです。

朝ドラ「風、薫る」で直美が入学した明治19年は、変化の波がまだごく限られた層にしか届いていなかった時代です。

髪を切ったうえで看護婦を目指す直美の姿は、まわりからすれば「前代未聞」に映ったと考えられます。

 

まとめ

「風、薫る」【第21話】では直美が長い髪を切り、「梅岡女学校付属看護婦養成所」に入学しました。

明治19年の女性が髪を切るということは、法令上の規制だけでなく、社会通念や美意識の面でも強い抵抗感をともなう行為でした。

他にも「風、薫る」のキャスト・スタッフ一覧は、以下の記事でまとめています。

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大森拓也
放送作家、物書き、フリーライター歴20年以上です。放送作家としての仕事については、以下のブログに記載しています。
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