「ブラッサム」珠の父が働かない理由・カナリアを飼う意味は?|宇野千代の父の史実
朝ドラ「ブラッサム」で、ヒロイン・葉野珠の父・葉野清治(演:渡部篤郎)は、仕事をせず、本家の葉野酒造から毎月お金を受け取って生活しています。
また、清治は自宅でカナリアを飼っていますが、鳥かごの中のカナリアには、どのような意味があるのでしょうか?
働かない父親とカナリアの飼育には、実在モデル・宇野千代の父親との共通点があります。
珠の父親が働かない理由、カナリアを飼う意味についての考察と、宇野千代の父・宇野俊次の史実を解説します。
「ブラッサム」珠の父親・葉野清治が働かない理由
朝ドラ「ブラッサム」で、渡部篤郎さんが演じる葉野清治(はの・きよじ)は、岩国の蔵元「葉野酒造」の長男で、珠の父親です。
本来は長男である清治が家業を継ぐ立場でしたが、本家の家督を弟・清重(演:三浦誠己)に譲り、その見返りとして毎月給金を受け取っています。
清治が働かないのは、本家から定期的にお金を受け取り、仕事をしなくても生活できるためです。
ただし、清治が仕事をしない本当の動機については、単に働きたくないというだけではなく、本家との関係も影響していると考えられます。
自分の思いどおりに生きたい一方で、経済的には本家に縛られている。そんな清治の複雑な立場が、働かない生活へのこだわりにもつながっているのかもしれません。
清治のモデル・宇野俊次も働かなかった理由【史実】
実は、珠の父・清治の人物設定には、清治のモデルと考えられる宇野千代の父・宇野俊次(うの・としつぐ)の生き方と多くの共通点があります。
宇野俊次は1855年(安政2年)7月29日、高森村(現在の山口県岩国市周東町)で生まれました。生家は代々続く造り酒屋「宇野酒造」で、近隣でも知られた財産家でした。
ドラマでは清治が長男で、弟の清重が酒蔵を継いでいますが、史実では俊次が次男で、兄の宇野政介が家業を継いでいます。
俊次が働かなかったのは、兄から多額の財産を分け与えられたとみられ、仕事をしなくても暮らせたためです。競走馬を飼い、料亭や遊郭へ出かけ、賭博をして警察に逮捕されたこともあったといいます。
そうした生活で財産を使い果たし、その後は宇野酒造の本家から、毎月1日と15日にお金を送ってもらっていました。
さらに、新たに競走馬を買おうとした際には兄の政介にたしなめられて送金を止められ、激怒した俊次が馬で兄の家に乗りつけて大暴れしたという逸話も残っています。
つまり、本家からお金を受け取って働かずに暮らすという清治の設定は、史実の俊次がモチーフになっていると考えられます。
ドラマで本家の使いが清治をたしなめる場面も、こうした兄弟間の確執が下敷きになっている可能性があります。
葉野酒造の実在モデルと考えられる、宇野千代の父の実家「宇野酒造」については、以下の記事で解説しています。
父親がカナリアを飼っている理由は?鳥かごの意味を考察
「ブラッサム」では、清治が自宅でカナリアを飼育する場面が描かれています。
【第1話】では、カナリアの餌を切らしていた珠に対し、清治は以前草履を濡らしてだめにしたことを理由に、雨の中を裸足で買いに行くよう命じます。
自分が飼っているカナリアを大切にする一方で、娘には厳しく接する父親として描かれています。
では、清治がカナリアを飼っていることには、どのような意味があるのでしょうか?鳥かごの中のカナリアには、清治自身と珠、二人の姿が重ねられていると考えられます。
自由に生きたいと思いながらも縛られている清治自身
カナリアは、自由に生きたいと願いながらも、本家に縛られている清治自身を象徴していると考えられます。
鳥かごの中のカナリアは、外へ出なければ安全に暮らせますが、自由に飛び回ることはできません。清治も本家からお金を受け取ることで、仕事をせずに暮らせる一方、本家との関係から逃れることはできません。
【第2話】では、清治が鳥かごのカナリアを眺めながら、「窮屈そうじゃのう。お前も」とつぶやく場面がありました。
さらに【第3話】では、弟の清重も、清治が何をしても窮屈さは変わらないという趣旨の言葉を口にしています。
そのため、清治は自分の境遇を鳥かごの中のカナリアに重ねている可能性があります。
自由に生きることができない珠自身の姿
カナリアには、厳しい父親のもとで、自由に生きることができない珠自身の姿も重ねられていると考えられます。
清治は自分の自由を求めながらも、娘の珠には厳しいしつけを行い、家族を自分の考えに従わせようとします。【第2話】では、羽織を準備していなかったことを叱責された珠が、罰として蔵に一晩閉じ込められる場面もありました。
自由に飛べないカナリアと、父親の命令に逆らえない珠。
この二つを重ねると、清治自身が自由を求めながらも、娘からは自由を奪っているという皮肉な関係が浮かび上がります。
「ブラッサム」は、自由を求め続けた作家・宇野千代をモデルにした物語です。
そのため、鳥かごの中のカナリアは、珠が成長して自分らしい人生を歩んでいく姿と対比させるための演出とも考えられます。
宇野俊次も実際にカナリアを飼っていた【史実】
清治と同じように、宇野俊次の家でも、当時としては珍しいカナリアが実際に飼われていました。宇野家の庭の泉水には、鯉や金魚も泳いでいたと伝わっています。
娘の千代は、鳥の餌となるハコベを取りに行かされたり、逃げ出したカナリアを探すよう命じられたりしたこともありました。
また、千代は雨や雪の日には草履を手に持ち、裸足で小学校へ通っていました。「足は濡れても腐らんが、草履は腐るけえの」という俊次の教えによるもので、ドラマで清治が珠を裸足で使いに出す台詞とほぼ重なります。
ドラマ【第1話】で、珠が雨の中を裸足でカナリアの餌を買いに行かされる場面は、こうした史実を組み合わせて描かれていると考えられます。
ただし、俊次が実際にカナリアを飼っていた詳しい動機や、鳥かごに自分の境遇を重ねていたかどうかまでは明らかになっていません。
出典:婦人公論.jp「朝ドラ『ブラッサム』モデル・宇野千代。自由奔放な性格は父譲り」
出典:NPO宇野千代生家「宇野千代の人生と文学」
また、宇野千代の生涯や史実については、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ
朝ドラ「ブラッサム」で、珠の父・葉野清治が働かないのは、本家の家督を弟に譲り、その見返りとして毎月お金を受け取っているためです。
清治のモデルと考えられる宇野千代の父・宇野俊次も、兄から財産を分けられ、その後も本家からの仕送りで働かずに暮らしていました。
また、清治が飼っているカナリアは、自由に生きたいと願いながらも本家に縛られている清治自身や、厳しい父親のもとで育つ珠を象徴している可能性があります。史実でも俊次はカナリアを飼っており、娘に裸足で出かけさせる教えも残っています。
「ブラッサム」では、こうした史実をもとに、父親と娘の複雑な関係が描かれていると考えられます。
他にも「ブラッサム」のキャスト・スタッフ一覧は、以下の記事でまとめています。
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