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「べらぼう第35話」“文武二道万石通”とは?松平定信を風刺した黄表紙を解説

「べらぼう第35話」“文武二道万石通”とは?松平定信を風刺した黄表紙を解説

2025年1月5日(日)スタートの第64作となるNHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」

「べらぼう」の主人公・蔦屋重三郎を演じるのは「横浜流星」さんです。そして、森下佳子さんが脚本を担当、あらすじは以下の通りです。

“江戸の出版王”と呼ばれた「蔦屋重三郎」の波乱万丈の生涯を描く。人口100万を超えた江戸、貧しい家庭に生まれた蔦重は養子として育ち、貸本屋から書籍編集・出版業へと進出。

田沼意次の時代に「黄表紙」の大ヒットで文化の中心となり、喜多川歌麿や葛飾北斎など、後の巨匠たちを世に送り出す。笑いと涙、謎が交錯する物語を通じ、蔦重の自由と文化への情熱が時代を超えて描かれるエンターテインメントドラマ。

 

「べらぼう」【第35話】では、蔦屋重三郎が黄表紙『文武二道万石通(ぶんぶにどうまんごくとおし)』を出版します。

「べらぼう」で、この作品は「松平定信」の政治改革を皮肉たっぷりに描いた黄表紙として登場します。

『文武二道万石通』とはどんな作品か?のちに松平定信の「寛政の改革」への皮肉と受け取られ、発禁処分と作者の追放を招いた史実を紹介します。

 

【べらぼう第35話あらすじ】蔦重が「松平定信」を批判した黄表紙を出版

「べらぼう」【第35話】、松平定信(井上祐貴)が進める政治改革に対し、蔦屋重三郎(横浜流星)は風刺で反撃。出版したのが、黄表紙『文武二道万石通』です。

物語の舞台は鎌倉時代、将軍・源頼朝が家臣に「文と武、どちらの武士が多いか調べよ」と命じるという筋書きですが、実はこれは「寛政の改革」と定信を茶化した“仮装風刺”。

町では黄表紙が大ヒットとなりますが、当の定信は皮肉に気づかず、「これは我が政治の正しさを示しておる!」と自画自賛。

ところが、その勘違いがかえって改革の勢いを加速させてしまい、蔦重は思わぬ展開に複雑な気持ちを抱きます。そこで蔦重は、さらなる風刺として作:恋川春町の『鸚鵡返文武二道(おうむがえしぶんぶのふたみち)』の出版を計画することに……

また、松平定信の「寛政の改革」の史実については、以下の記事でまとめています。

「べらぼう」質素倹約の「寛政の改革」とは?蔦重が受けた出版統制と処罰
「べらぼう」質素倹約の「寛政の改革」とは?蔦重が受けた出版統制と処罰NHK大河ドラマ「べらぼう」【第34話】からは「寛政の改革」が描かれます。「寛政の改革」は、秩序回復を名目に風紀や出版への統制を強化し、町人文化にとっては弾圧の時代でした。...

 

『文武二道万石通』とは?作者は朋誠堂喜三二、江戸で爆発的に売れた風刺黄表紙

↑作:朋誠堂喜三二『文武二道万石通  3巻』1788年
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(https://dl.ndl.go.jp/pid/9892612/1/12)

この黄表紙『文武二道万石通』は、天明8年(1788年)に版元・蔦屋重三郎から出版された作品です。

作者は、久保田藩(秋田佐竹家)に仕える武士でありながら戯作者としても活動した朋誠堂喜三二(ほうせいどう・きさんじ/平沢常富)、挿絵は、喜多川歌麿の弟子とされる喜多川行麿です。

出版されるや否や、「江戸中で大流行」と言われるほどの人気を博し、のちに絶版処分となるまで増刷も繰り返された“問題作”です。

 

鎌倉時代が舞台『文武二道万石通』は何を風刺した?

↑作:朋誠堂喜三二『文武二道万石通  3巻』1788年
出典:国立国会図書館デジタルコレクション(https://dl.ndl.go.jp/pid/9892612/1/9)

『文武二道万石通』の物語の表向きは鎌倉時代。将軍・源頼朝が「文と武、どちらに優れた武士が多いか」を調べさせるため、家臣の畠山重忠が各地の大名・小名を調査します。

まず富士山の人穴に武士たちを送り込み、「文」「武」「どちらにも属さないぬらくら武士」の三種類に分類。その後、箱根七湯で彼らの素行を観察するのですが、ぬらくら武士たちは

  • 芸者遊びに夢中になり
  • 陰間遊び(若衆との色恋)にうつつを抜かし
  • 遊郭で借金三万両をつくり
  • 果ては池を“無間の鐘”に見立てて金を祈願する始末…

こうした堕落した武士たちの姿は、「寛政の改革」で理想を掲げる定信が、まったく実態を見ていないことへの痛烈な皮肉です。

しかも登場人物たちの衣装や名前、家紋には、定信や田沼意次派の大名たちを想起させる細かな暗号が仕込まれており、当時の読者には「誰を風刺しているか」がすぐにわかる構成になっていました。

 

松平定信の批判ではなかった?『文武二道万石通』に込められた風刺の本質

大河ドラマ「べらぼう」では、『文武二道万石通』が松平定信を直接風刺した作品として描かれていますが、史実では、本来この作品は武士の堕落を笑った社会風刺としてつくられたものです。

作中では、「文」や「武」にも属さない“ぬらくら武士”たちが、温泉や遊郭で放蕩にふける姿がユーモラスに描かれています。この内容は、定信が掲げた「文武両道」や「質素倹約」といった理想とは正反対で、むしろ当時の武士の実態を浮き彫りにしています。

当初は武士全体への風刺として読まれていましたが、改革が厳しくなるにつれて、定信の理想主義と現実との乖離を皮肉った戯作としても受け取られるようになります。

その結果、作者・朋誠堂喜三二は藩主の命で江戸から国元へ戻され、作品も幕府によって絶版処分となりました。

大河ドラマ「べらぼう」で、俳優「尾美としのり」さんが演じる「朋誠堂喜三二」の詳細については、以下の記事でまとめています。

「べらぼう」平沢常富(尾美としのり)の正体は?文人「朋誠堂喜三二」の史実
「べらぼう」平沢常富(尾美としのり)の正体は?文人「朋誠堂喜三二」の史実NHK大河ドラマ「べらぼう」、尾美としのりさん演じる「平沢常富」は、洒落本作家「朋誠堂喜三二」として第12話から本格登場します。...

 

まとめ

「べらぼう」【第35話】に登場した『文武二道万石通』は、偉い人が掲げる理想と、現実のズレを笑いに変えた黄表紙です。

他にも「べらぼう」のキャスト・登場人物・スタッフ一覧は、以下をチェックしてください。

「べらぼう」キャスト・登場人物、スタッフ一覧
大河ドラマ「べらぼう」キャスト・登場人物、スタッフ一覧NHK大河ドラマ「べらぼう」のキャスト・登場人物・子役、制作しているスタッフをまとめました。...
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大森拓也
放送作家、物書き、フリーライター歴20年以上です。放送作家としての仕事についてはこちらで記載しています⇒https://note.com/hearty_takin9949
大河ドラマ【再放送/見逃し】動画を見る方法
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